アメリカのすし店は、
他民族国家という性質上、顧客のターゲット
により大きくお店の雰囲気が異なります。
つまり、日本人を多くの客層に持つ大都市の
すし店では、ほとんど日本のすし店と変わりない
おすしが味わえますし、日本人の少ない田舎町の
すし店では、それこそベトナム人や、中国人が
すしを握るお店も少なくありません。
そういったお店では『これってすし?』
と言いたくなる様なものもたくさんあります。
因みに私が勤めていたお店は、
オーナーは台湾人でしたが、
日本食を任されていたのは、私をはじめ
日本人ばかりでした。
お米は、錦米といわれる米で、
日本の米とほとんど変わりなく、おいしいお米でした。
ちょうど当店が使っている”はつしも”によく似た
つぶの大き目のお米です。
ねたは、アメリカにもおいしい魚はたくさんあります。
まぐろ、サーモン、かんぱち、グルーパー(白身魚)、、
などは、生で新鮮なものが手に入りました。
しかし、はまち、あなご、うなぎ、のり、かんぴょう
わさびなどは、日本からの輸入が頼りです。
もともと、生魚を食べる習慣のない欧米人ですが、
このところのヘルシーブームで、すしは大人気でした。
わたしたち日本人には、固定観念というものが
根強くあると思いますが、アメリカ人にはそれがありません。
それぞれ、思い思いにすしを楽しんでいるようでした。
たとえば、わさびのツーンとくる感覚が好きな人は、
わさびに少量の醤油を混ぜ、緑色したわさび醤油を
つけて食べます。ポン酢をつけて食べる人、
マヨネーズや、ケチャップをつけて食べる人。
『それはないやろ~』と思うようなことを平気で
やってのけます。
そんな中で、教えられる事もたくさんありました。
当店の変わり巻なども、そんな一例です。
今では、回転すしさんなどでも当たり前のようにならぶ
揚げ物を使った巻物や、アボカドを使ったすし
シャリが外側になった巻すし。これらは、欧米からの
逆輸入すしです。
”すし”という食文化は、
もはや日本人だけのものではありません。
世界中どこへ行ってもすしを口にする事が出来ます。
しかし、その形はかならずしも私たちが思い描く
すしの形ではないかもしれません。
現代のすしの基本が、酢飯に在るのならば
その広がりは、想像を超えていく事でしょう。
そんなすしの可能性に、
これからも挑戦し続けたいと思います。